自分と他者をつなぐ心のケア
深い悲しみの中で、どうにか生きていく術を探している方がいるかもしれません。そのようなときに、「利他的自助」という考え方があります。
利他的自助とは何か
- 自助
- 自分の心や体をいたわり、立ち直るための行動
- 利他
- 自分以外の人に思いやりを向け、支える行動
この2つが重なるとき、他者に手を差し伸べることが、自分の中の感情や神経の緊張を少しだけほぐすような働きをもたらすことがあります。
私自身の経験から
私は、娘を自死で失いました。あまりに突然の出来事で、生きている意味もわからなくなりました。
その後、無料相談室を運営したり、ボランティアで相談員として活動するようになりました。それによって悲しみがなくなったわけではありません。ただ、それらの活動を通して、当初は強く抱いていた死への衝動が、少しずつ遠のいていったのです。
自分の心の痛みを持ちながら、それでも誰かの話に耳を傾ける。そのことが、ほんのわずかでも、自分の生に意味を与えてくれるように感じました。
知っておいてほしいこと
利他的自助は、無理に誰かを助けることを勧めるものではありません。あくまでも、「そのような形の心の動きもある」という視点の一つです。
- 悲しみの中で、人との関わりが力になることもある
- 誰かを気遣うことが、結果として自分の支えにもなることがある
- そしてそれは、特別な活動や大きな行動でなくてもよい
この考え方が、苦しみの中にいる誰かにとって、一つの支えや方向性となればと思います。
大切なこと
私は現在、直接的な支援活動を続けることができない状況にあります。心ない批判や危険を感じる体験を通して、人との関わりから距離を置かざるを得なくなりました。
それでも、利他的自助という考え方そのものは、私の中で意味を持ち続けています。なぜなら、この実践を通して、私自身が生きる意味を見出した体験があるからです。
もしこの文章を読んでくださった方の中に、深い悲しみや絶望の中にいる方がいらっしゃるなら、いつか心の準備ができた時に、ご自分なりの小さな実践を見つけていただけることを願っています。それは大きな活動である必要はありません。近くにいる人への小さな気遣いでも、道で困っている人への声かけでも、あるいは同じような痛みを抱える人への理解でも構いません。
そうした実践が、結果としてあなた自身の心に何らかの支えをもたらすかもしれません。それが利他的自助の本質だと、私は体験を通して学びました。強制されるものではなく、あなたが選択し、実践していくものです。